新年のご挨拶
一般財団法人京都府剣道連盟 会 長
元衆議院議長 伊 吹 文 明
新年明けましておめでとうございます。
皆さまには、今年がおだやかな良き年であることをお祈りし、変わらぬご厚誼をお願い致します。
昨年は温暖化による異常気象、かつてなかった災害等、科学のもたらす便利さ、快適さを際限なく使ってしまう人間の業への自然の怒りを受けた年でした。また、ウクライナや中東でも、人間の理性より各々の主義・主張がまかり通ることによる紛争や戦争で、結果として多くの人命が失われています。今年はもう一度一人ひとりが理性を取り戻し、自己抑制と矜持による世界秩序、人間社会を創りなおす年であってほしいと願っています。
私も衆議院議員を引退してもう4年目になります。昨年の総選挙での自民党の少数与党への転落、その原因となった議員一人ひとりの順法精神や規範意識は当然のこと、法で許されても我慢する「選ばれた者の義務」の欠如を思う時、政策以前の失敗による政治の混乱が国民生活の混乱とならぬよう、後輩の皆さんにも一人の有権者として必要なことは率直に申し上げたいと思っています。
伝統武道の真に求めるものは、日頃の厳しい自己鍛錬のなかで、技と体だけではなく心の修養を通じ、人間社会の基本をなす礼節と品性・矜持を身につけることにあると思います。伝統武道のなかには競技スポーツ化し、勝ち負けのみを競い、相手に対しての礼や敬の心が失われているものがあるのは残念な現実です。礼をもって始まり礼をもって終わると言われる剣道の「こころ」こそ、自らを律し、思いやりの心をもって他と協調し、公の為に尽くす日本人本来の生き方即ち文化の原点なのです。
御指導に当られる先生方にもこの点を大切に、これからも宜しくお願いしたいと存じます。
結びに、皆さまの今年のご発展とご健勝をお祈りし、新年のご挨拶といたします。
托鉢の 雲水湯気だす 寒さかな